【読書感想文:ネタバレあり】平家物語  作:行長入道(著:山下明生)

切なすぎて、読んでいて「もお~何でよ~。」と何度つぶやいたことか。そして「盛(もり)」に苦しんだ。
個人評価:4.5/5


 日本史で習った本シリーズ第3弾は平家物語である。私の事前知識は今回もほとんどなく、平安時代に源氏と平家が争った結果、源氏が勝ってここから鎌倉時代が始まるという程度である。

 読んだ感想は「切ない、切ない!!」であった。平家の平清盛は朝廷の敵を倒したり、良い事業を行ったりもしていたが、権力が強まると朝廷で口出しをする法皇を軟禁したり、東大寺などの僧侶が邪魔になるとお寺を焼き尽くすなど悪行をし始める。その悪行から平家を滅ぼそうという流れに発展するのである。

 私が切ないと感じたのは、平家に生まれてしまったがためにたくさんの若者が殺されたり、自害してしまったことである。清盛は数々の悪行をしたのでそうなってもしょうがないが、他の平家の人々はその人個人には特に理由がないのに、平家というだけで最後はほとんどが死んでいく。中には14、15才の若者もいて、読んでいて「もお~何でよ~。」と何度つぶやいたことか。

 そして読んでいて大変だったのは、平家の人々の名前がとても似ているため、それぞれを区別することである。平家にはたくさん「盛(もり)」がつく人物がいて、きよもり、つねもり、あつもり、のりもり、よりもり、しげもり、むねもり、とももり、これもり・・・誰が誰だかわからなくなる。

 また源氏は登場人物が平家より少ないが「義(よし)」がつく人物が多い。さらに平家なのに「盛(もり)」がつかない人物も中にはいて、平家の教経(のりつね)は源氏の義経(よしつね)と区別がつかない。

 それぞれの活躍や最期はドラマティックに書かれているのだが、何しろ文字だけだと誰だか区別がつかないので感情移入がしにくかった。登場人物が多い物語は、漫画や映画など映像があったほうが顔で区別ができて良さそうである。

 あとこの時代の馬には同情してしまう。各地への長距離移動や戦の際はもちろん、船での戦の際には結構な距離を泳がされ、鵯越(ひよどりごえ)という場所にある高さ約45メートルの崖では、無理やりその崖を駆け下りさせられる。お馬さんも大変である。

 日本史の授業では「1180~1185年 源平合戦」の一文で覚えさせられるだけの歴史も、当時の人々は命がけで戦い、苦しみ死んでいったのである。登場人物が多く読むのは大変だし、平家の滅亡にとても心を痛める物語だったが、読んだことで単なる歴史の中のひとつだった出来事が、自分の中で心に残る出来事になったので読んで良かったと思った。

 

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2020.1.31読了