【読書感想文:ネタバレあり】恋する小倉百人一首  作:阿刀田 高

この本を読んで百人一首・・・というか和歌の読み方がやっと分かった気がした。
個人評価:4.5/5


 前回からの日本文化を学ぶ続きとして、小倉百人一首を素人向けにわかりやすく解説してくれている本作を読んでみた。

 私は今まで百人一首は上の句と下の句を覚えるカルタとしてしか見ていなかった。和歌の現代語訳を読んでも「ふ~ん・・・」と何も感じなかった。しかし今回この本を読んで百人一首・・・というか和歌の読み方がやっと分かった気がした。

 和歌は直訳された現代語訳を読むだけでは意味がなく、その直訳から何をイメージするかが重要なのである。恋の歌なら、どういうシチュエーションや気持ちで詠んだ歌なのか、季節の歌だったらその風景を、その歌を読んだ読者が鮮明に想像できる歌が名歌なのである。

 どんなに技巧的でキレイにまとめていても、読者がイメージできなければただの格好つけた作品になるだけで、その歌を詠んだ人物の背景や気持ちが読者に伝わらなければ意味がない。和歌にはイマジネーションが大切なのである。

 私が和歌の読み方を理解した上で小倉百人一首の中で好きになった歌は、「鵲(かささぎ)の渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞふけにける」という大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ歌である。

 鵲という鳥はつぎのような伝説のある鳥だそうだ。七夕の時、織姫と彦星の年に一度の逢引きの際に、二人のためにたくさんの鵲が羽を連ねて橋の役割をするという。

 この歌の解釈は二通りあり、「鵲の渡せる橋」を「宮中にある橋」と解釈する場合は、「鵲が天の川につばさをならべてかけた橋ではないけれど、宮中の橋に置いた霜が白いのを見ると、はやくも夜がふけたことだ。」という訳になる。

 「鵲の渡せる橋」を「天の川」と解釈する場合は、「鵲がつばさをならべてかけた橋、すなわち天の川に、霜が置いて白々とさえわたっているのを見ると、はやくも夜がふけたことだ。」となる。

 どちらにしてもとてもイメージしやすく、そのイメージが美しい。冬のしんしんと寒い雰囲気も伝わってきてとても好きな歌になった。

 一つの歌に対し解釈を何度も読んで理解する必要があるので、この本を読むのは結構時間がかかり疲れるが、「いろはにほへと」にまつわる話やダジャレに関する話などおもしろい小ネタも挟みつつ、読みやすくまとめられているので、この本は日本文化に興味がある方にはおすすめの本である。

 

 

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2020.1.10読了