【読書感想文:ネタバレあり】ピグマリオン  作:バーナード・ショー

物語の王道とはまったく異なる雰囲気の結末だった。
個人評価:4.5/5


 この物語はオードリー・ヘップバーン主演の映画「マイ・フェア・レディ」の原作である。戯曲のためほとんど登場人物のセリフとト書きで構成されており、偏屈な言語学者が言葉遣いの悪い花売り娘を数ヶ月の訓練で素敵な貴婦人に仕立てられるかという実験をするストーリー。お互いの努力の末、ヒロインのイザベラは貴婦人としてパーティーに赴き、人々から羨望のまなざしで見られ、言語学者のヒギンズの実験は大成功に終わる。

 この物語はその続きが面白いのである。男女が出会い、色々出来事があった後、最後はハッピーエンドか悲しい別れというのが物語というものの王道だと思われるが、この作品はまったく想定外の雰囲気で終わるのだ。

 パーティーが終わった夜、イザベラは実験の日々が終わってしまったため今後の自分の行く末に不安を感じる。貴婦人になったはいいが、今後仕事をするには知識は何もなく、かといって元の汚い花売り娘に戻る気もない。そのためヒギンスに今後の生活を頼ろうとしていた。しかしヒギンスは女が自分に媚びることをとても嫌い、イザベラの訴えは彼にはまったく通じない。

 お互い憎まれ口を叩きあい、最終的にイザベラは彼に頼ることはできないと悟り、自分ひとりで生きていく決心をするのだった。そしてヒギンスは自立を決意したイザベラとなら今後良い仲間になれるだろうと言う。そしてイザベラは「あんたと仲間になるなんてまっぴらごめんだね。」と言って旅立つ。

 後日談として、その後しばらくしてイザベラがヒギンスに嫌々ながらも仕事に必要な知識を学ぶ場面が描かれており、自立した二人の男女のなんでも正直に話せる関係性がなかなか良かった。

 この物語は日本でいう明治時代の話なので、女性は男性の三歩後ろを歩くべきだという世の中だが、男に頼らず自ら努力して未来を切り開いていく女性としてイザベラを描いているのが斬新だった。

 でも映画のマイ・フェア・レディは結末が少し違うようだ。どちらが好みか一度映画を観てみても良いだろう。

 

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2019.10.29読了