【読書感想文:ネタバレあり】オペラ座の怪人  作:ガストン・ルルー

あの独特なメロディーがしばらく頭から離れなかった。
個人評価:5/5


 この小説が元となった劇団四季のミュージカル「オペラ座の怪人」の世界観が大好きなので、原作も読んでみた。前半はなかなか話が進まないのだが、中盤からは怒涛の展開でぐいぐい話に引き込まれていった。

 訳者のあとがきに、ミュージカルのテーマ曲「オペラ座の怪人」が読者の頭の中で流れるような翻訳を心掛けたと書いてあったのだが、実際に私の脳内で3回ほどあの音楽が流れた。オペラ座の客席にシャンデリアが落ちるシーン、クリスティーヌが怪人によって鏡の中に引きずり込まれるシーン、怪人がクリスティーヌをオペラ座の地下にある地底湖に連れ去るシーン。この3つのシーンでは特にミュージカルの世界観を感じ、あの「ダダダダダーン、ダダダダダーン」というメロディーがしばらく頭から離れなかった。

 あとおもしろかったのが、オペラ座の内部の構造である。地上部には衣装係などの裏方がいて一般的な業務を行っているらしいのだが、オペラ座の地下の世界がすごいのだ。ラウールがクリスティーヌを救うため地下の怪人の家を目指すのだが、その途中に地下の暗闇で働いたり暮らしている人々や建物の仕組みが明らかになっていく。地下になぜ湖があるのかも疑問だったのだが、当時のパリの地下にはたくさん水が湧き出していて、汲み出しても汲み出しても水が出てきてしまうから湖にしていまったらしい。想像よりずっとオペラ座は大きな建物で興味深く、一度行ってみたいと強く思った。

 最終的には怪人はクリスティーヌを解放するのだが、恋人のラウールはクリスティーヌにふさわしいのだろうかと少し疑問に感じた。ラウールはお金持ちではあるが何も特技もないただの普通の青年で、怪人は音楽、建築、奇術などに素晴らしい才能がある。ただとても醜いのだ。醜いだけで誰からも愛されず、どんどんひねくれていく。実際の社会でも才能は素晴らしいのに、表面的な理由で世間に認められてない人って実はたくさんいるのかもしれない。

 

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2019.10.6読了

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この仮面はドクロなんだって