【読書感想文:ネタバレあり】新アラビア夜話  作:スティーブンソン

世界観がダークで、とにかく設定が奇抜で先が気になってしょうがない展開だった。
個人評価:4/5


 この物語はふたつの大きな事件をテーマに、それに関わった様々な人々を描いた連作短篇集である。世の中を悲観し死を選ぶことにした人々が集まり、トランプでその日死ぬ人、死ぬ人を殺す人を決めるという組織の話の「自殺クラブ」と、世界で何番目かに大きいダイヤモンドを手にした人々を描いた「ラージャのダイヤモンド」という話なのだが、世界観がダークで、とにかく設定が奇抜で先が気になってしょうがない展開だった。

 「自殺クラブ」では、もしかしたら死ぬかもしれないカードゲームのスリリングさの虜になり、本気で死ぬ気もないのに長年通った男がとうとう運命のカードをひいてしまった場面は印象深かった。

 命をかけたゲームはどんなゲームよりもハラハラして、無事に終わった時の達成感は半端ないのかもしれない。しかし今まで一回も死のカードをひかなかったのだから、今回も大丈夫であるということはありえないのだ。自分が勝つと思い込んで、大きな賭けに出ることの愚かさを学んだ。

 また「ラージャのダイヤモンド」では、町の真面目な牧師が偶然大きなダイヤモンドを手に入れてしまったがために犯罪者として生きることになってしまうなど、ヘタに身の丈にあわない物を手に入れると、今までの普通の生活があっけなく崩れてしまうのを知った。

 私は日々平和に暮らすことをモットーとしているが、この物語を読んでハラハラする賭け事や無謀な冒険、自分に似つかわしくない大層なシロモノにはなるべく手を出さず、平和に平凡に暮らしていきたいと改めて思った。

 

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2019.11.9読了