【読書感想文:ネタバレあり】私のギリシャ神話  作:阿刀田 高

実際のギリシャ神話は星座だけではなく、ヨーロッパ文化全体に大きく関わっていることがわかった。
個人評価:4.5/5


 前回読んだ三軒茶屋星座館シリーズギリシャ神話について興味を持ったので、本作を読んでみた。作者がギリシャ神話の学者ではなく、小説家のため、素人にもわかりやすく様々な説のある神話を面白いエッセイとしてまとめ上げている。

 私はギリシャ神話とは星座と深く関りがあるものなのだろうとは思っていたが、実際のギリシャ神話は星座だけではなく、ヨーロッパ文化全体に大きく関わっていることがわかった。

 有名な絵画や彫刻のモチーフとして数多くのギリシャ神話の一場面が描かれている。「ヴィーナスの誕生」や「ミロのヴィーナス」はアプロディテ(英語名ヴィーナス)をモチーフにしているし、ルーブル美術館やイタリアのフィレンツェなどの美術館にはたくさんのギリシャ神話の名シーンを描いた芸術作品が残されている。

 また太陽系の惑星の名前には例えば木星ギリシャ語でゼウス、英語名でジュピターというように、主要な神の名前がそれぞれつけられている。

 中でも天王星ウラノス海王星はポセイドン、冥王星はハデスと名付けられているのが、とても興味深い。惑星名の漢字の意味とつけられている神の名がぴったり一致しているのだ。天界の王だからウラノスウラノスとはゼウスの父である)、海の王だからポセイドン、冥界(死者の国)の王だからハデス・・・ヨーロッパだけでなく、日本においてもギリシャ神話が昔から根付いていたのだろう。

 そしてギリシャ人の「私はギリシャ人である」というアイデンティティギリシャ神話だと言われている。ギリシャは小さな島がいくつもある国で、小さい社会が集まってギリシャという大きな国になっている。普段はそれぞれの島に暮らし、ひとかたまりになることは少ないが、小さいころから勇敢な神々などの神話に触れてきた者同士、いざという時に同じ考えを持つ者として団結することができるという。

 私が当初思っていたよりギリシャ神話はギリシャやヨーロッパの人々の心に深く根付いていた。日本にも同じように神話が数多くある。次回は同じ作家の書いた古事記に関する本を読んでみるつもりである。

 

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2019.12.14読了