【読書感想文:ネタバレあり】ジーキル博士とハイド氏  作:スティーヴンスン

私はジーキル博士の脳内は、最初からほぼハイド氏だったように感じた。
個人評価:4/5


 突然だが私はミュージカル俳優の石丸幹二さんが好きだ。その石丸さんが以前ミュージカルで演じた「ジキル&ハイド」という演目の中に「時が来た」という歌がある。ミュージカルは観たことがないのだがこの曲がとても好きなので、ふと一体どんなストーリーなのだろうと思い原作を読んでみた。

 物語の後半までジーキル博士とハイド氏の関係性についてほとんど語られず、はやく詳細が知りたくてもどかしかったが、最後にやっとすべてが明らかにされた。

 ジーキル博士は普段は医者として他人から尊敬される善い行いを心掛けていたのだが、心の片隅に悪事を働きたいという欲求があった。そこでハイド氏を誕生させたのだ。善い自分と悪い自分を分割し、姿も二つの人格で変えられる薬を使い、ハイド氏として悪いことをする。すると他人に気づかれず、すべてハイド氏がやったこととして処理され、ジーキル博士は無関係でいられると思ったのだ。

 作者はジーキル博士を最初は良い人であったかのように取り扱っているが、私はジーキル博士の脳内は、最初からほぼハイド氏だったように感じた。なぜなら悪事を働きたい欲求なんてほとんどない方が一般的だし、悪いことをする時にだけ他人に知られないようにコソコソとハイド氏の存在を使うなんて卑怯だと思うのだ。

 それにしてもこの物語を原作にミュージカルの脚本を書くにはどのようにアレンジしたのだろう。原作のままだとジーキル博士の自業自得の話が主になってしまい、なんだか後味が悪い。おそらくジーキル博士の恋愛などを絡めて感動するようにアレンジしているのだろう。とにかく一度石丸さん主演の素敵なミュージカルをぜひ観てみたいものである。

 

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2019.10.8読了