【読書感想文:ネタバレあり】ガラスの封筒と海と 作:アレックス・シアラー
海が本当に生活の一部になっている人のみが知る、本来の海の姿を表現している作品だった
個人評価:4.5/5
この物語は海辺の村に住む少年が、ふと思い立って手紙を入れた瓶を海に投げ、誰かが拾ってくれるのを待つストーリーなのだが、その少年を通して海の色々な面を知ることができる。
私は海のない埼玉県に住んでいるので、海にものすごく憧れを抱いている。夏に海のある観光地に行くと、こんな場所に住んでみたいとすぐ思ってしまうのだが、海辺に住むには様々な苦労もあるのだ。
漁師や、貨物船の船員になると嵐や事故に遭い、海で命を落とすことが多く、村の住人のうち今まで海で亡くなった家族がいない家はほぼないほどだという。また、夏はサーフィンや海水浴などもできるし、観光客も来るので良い環境だが、冬は寒いなか早朝から漁に出るし、観光客も来ず陸地での商売は成り立たない。このような現実はわかっているようでわかっていなかった。
そしてこの物語を読んで、少々ロマンチックだが私は海にも人間の気持ちが通じるのでないかと思った。自分の心が優しいときは海も穏やかで、自分が落ち込んだ時は優しく波で慰めてくれ、イライラしている時は海も荒れてくるのではないかと。
少年はある日手紙の返事が入った瓶が海に漂っているのを見つける。それは海で死んだ者が集まると言われている「デイヴィ・ジョーンズの監獄」に住んでいるテッド・ボーンズ氏からの手紙だった。この物語ではテッド・ボーンズ氏の正体は最後まで語られなかったが、私は海からの返事だったと思いたい。嬉しい時も悲しい時もいつも海と一緒にいた少年には、海も真剣に答えてくれていたのだろう。
自然には人間はかなわないし、怖い思いもさせられるけど、その大きな存在が近くにあることはやっぱり羨ましいなと思った。