【読書感想文:ネタバレあり】ライオンのおやつ 作:小川 糸
全編にわたって雰囲気がとてもあたたかいが、読む時期が今ではなかったと感じた。
個人評価:5/5
この作者の小説は何作かすでに読んでいるのだが、どの作品も雰囲気があたたかくてとても好きである。この作品も例外なく全編にわたって雰囲気がとてもあたたかい。しかし読む時期が今ではなかったと感じた。
この物語は若くして末期がんを患ってしまった女性が瀬戸内の環境の良いホスピス(ライオンの家)にやってきて、一生懸命生きるストーリーなのだが、奇跡が起こるわけでもなく最後はこの世を去ってしまう。
平和な世の中でこの物語を読むと、かわいそうだけど一生懸命生きたね、頑張ったねという感想で済むのだが、新型コロナウイルスで混乱している世の中でこの物語を読むととても辛くなる。
読書というのは心に余裕のある時であれば、悲しい結末であっても所詮は物語であると割り切ることができるのだが、実際に世界中でたくさんの人たちがウイルスによりあっけなく亡くなっている中では、読後、気分が滅入ってなかなか立ち直れない。
今の状況で読書をするなら、読んでいるうちに元気が出て、希望が湧いてくる物語が良いのだとしみじみ感じた。